In the RainyWoods & ・・・・・・

〜芦生演習林アドベンチャートレック〜

11/3


朝から小降りの雨が続いていた。集合は現地の駐車場に7時。しかし予定のHiroさんはまだ到着していない。「前日の夜に泥縄で用意して行く」とメールが入っていたので、たぶん昨日は遅かったのだろう。予定より40分ほど遅れてHiroさんが到着し、今回のメンバーがそろった。


今回は、春からわっちゃんと、「秋には芦生の演習林の奥まで紅葉トレッキングに行きましょう」と約束していたのが実現し、その話にdunkeldさんとHiroさんが加わって4人パーティーで由良川を源流まで遡ることになったのだ。
ここへは、僕は高校時代も何度か入っているし、5〜6年前にも友人とともに今回の予定ルートを辿っている。以前に比べて体力・脚力は格段に落ちているが、それほど苦労した記憶もないので、今回も雨模様だが紅葉を楽しみながら歩けるだろう。


結局、8時頃に駐車場を出発。演習林事務所で入林届けを書いて、はじめは軌道を歩く。 軌道を歩く 落ち葉の軌道

秋雨の渓流 軌道の道


ずっと雨は降っているが、森の中は以外と雨にあたらず快適だ。Hiroさんなどは、カッパの下だけ履いて上は傘をさして歩いている。
途中、軌道の線路で滑ってdunkeldさんがハデに転ぶというアクシデントはあったが、大した怪我もなく、また大した上り下りもないので、まずまず順調に進み、カズラ谷の出会いを経て、七瀬までやってきた。


「???????」


確かここで道は対岸の右岸側へ渡っているはずだが、あたりを見回してもそれらしき橋も安全な渡渉点もない。地図で確かめてもやはり道はここで対岸に移っている。


「コレ、渡るの?」


いつものようにウエーダーでも履いているならことは簡単だ。しかし今回はただのトレッキング。当然そんな持ち合わせはない。しかも、さほど寒くはないとは言え、すでに11月だ。


「ほな、脱いで渡ろか」


Hiroさんがこともなげに言う。どうやらこの人が「黒部の大イワナの化身」と言うのは本当のことのようだ。心なしか、顔が嬉々としている。 オオイワナ、カワニカエル ア、アシガイタイ・・・


「オオー!!」「ギャーーー!」「ウギャーーー!!!」叫び声をあげながらも、何とか全員無事に対岸へたどり着く。足を拭き靴を履くと、その暖かさにホッとする。
が、すぐに次の試練が待っていた。対岸にあるはずの道がわからないのである。みんなでウロウロ探すがすぐ川に降りてしまう。
そうこうするうちに、Hiroさんがルートを見つける。思っていたよりずいぶん上にあった。

アメニケムルモリ
七瀬で軌道を離れてから、片斜面の不安定な道(というよりケモノ道)が続く。どうもまわりの景色など観ている余裕もなくなってきた。
ずっと右岸側の片斜面の道を歩く。気を抜くと滑るので、全然気が抜けない。


なかなか、昼食を摂るのに適当なところが見つからず、ついついそのまま進んできたが、やっぱり腹は減る。雨宿りできるようなところも出てこないので、濡れた岩盤の上ではあるが、ここで昼食にする事にした。
カッパは着ているが、僕のカッパはいい加減なカッパなので、すでに少し身体が濡れて寒い。傘をさしながらの昼食となった。


昼食というのに、なんだか全然ホッとしない。原因はわかっている。全然雨が止まないからだ。
このまま降り続けばテント泊の時も外で火を焚いて食事というわけにはいかない。楽しみも半減だ。こういう山行の楽しみの大半は夕飯と酒盛りだ。それに大焚き火ができればいうことはない。

がしかし・・・。


雨の中、再出発する。やはり止む気配はない。まあ激しく降っていないのが救いか・・・。


どれくらい進んだのだろうか。相変わらず、あるのかないのかわからないような片斜面の道がとうとう消えてしまった。
それらしいところを進んで行く。がどうも道ではないようだ。そのうち崖になってきた。崖の様相を呈してきてから結構進んでしまったので、戻るのも難しい。
このまま、降りれそうなルートを探して降りるしかない。雨に濡れた岩は滑る。完全に両手両足で怖々のクライムダウンとなった。
やっと河原に降りて、最後尾のHiroさんをみる。

「エッ!?カッ、傘さしたまま降りてる・・・!?」

大げさかもしれないが、どう見てもふつうに歩いているようには見えない。歩いているように見えて、実は地面から1cmくらいの空中を浮いていると言う噂は本当かもしれない。


さて、降りたはいいものの、ここから先、ルートがない。
地図をみて、あたりをいろいろ探した結果、どうやらいつの間にか再び対岸に渡る機会を逸してしまったらしい。


「もっ、もしかして、また・・・(汗)」


なぜかHiroさんは、嫌がっているようには見えない。逆に喜んでいるように見える。
仕方がないので、再び靴を脱いで渡渉。先ほどより深さが複雑で水流も強く、途中の岩に乗って一旦間をおき、何とか渡りきる。
ほっと一息、の間もなく、再び先を急ぐ。どう考えても、今夜の宿泊予定地まではマダマダ遠いからだ。しかし、そろそろ身体がきつくなり始める。雨のせいもあるが、やはり脚力の低下と体重の増加が原因だ。


再び道は左岸側に移ったが、相変わらず岩や木の根が張り出した滑りやすい片斜面の道である。全く気を抜くことができない。だんだんと「足が棒」の状態を通り越してきた。 秋雨の森


考えれば、重い荷物を担いで歩くのも久々のことだ。歩けなくなってくるのも当然だ。ましてや普段、運動なんて全然していない。よく言えば、昔の経験だけで歩いているようなものだ。こういう人間が遭難するのである。


そうはいっても、誰かがおんぶしてくれるわけもなく、タダタダ、ひたすら黙って歩かなくてはいけない。


途中2箇所ほど、泊できそうな広場があったが、予定地はまだまだ先なので、やり過ごして先を急ぐ・・・。いや、実際急いでいたのはHiroさんとdunkeldさんで、僕とわっちゃんは、急ごうにも足がついて行かなくなっていた。

しばらく行くと、追い打ちをかけるように鎖のついた岩場が登場。厳しくなっていた脚力を一気に消耗する。
その先、なぜか道は川と川に挟まれた尾根道となり、やがて急な斜面をジグザクと急登する。
すでに、日が落ちかけていて、あたりは暗くなりかけている。
一応地図で確認するものの、このまま進んでも、もしかして少し違うルートに入ってしまったかもしれない、と言う不安があったので、先ほど(と言ってもかなり進んでしまっていたが・・・)やり過ごした広場を目指して戻ることにした。
・・・と言うことは、途中越えてきたあの岩場もまた降りなくてはダメだ、と言うことである。考えただけでフラフラだった。
そういえば高校時代、こういう行動での脚力や体力は有り余っていて、たとえば当時少し僕より体重が重くて、その日の行動の終盤には歩けなくなるくらいへばる人はいたが、それが彼にとってどれほど困難なことだったか、今はじめてわかったような気がする。だって当時の僕のように、Hiroさんやdunkeldさんはまだまだ元気なのだ。そして歩けなくなるくらいへばっているのは、僕とわっちゃん・・・。


まあ、どうあがいても、誰かが車に乗せて運んでくれるわけではないので(笑)、とにかくフラフラの足取りで先ほどの尾根道を下り、岩場を降り、滑りそうな川沿いの岩場を慎重に進み、ヘツリでは、上がらなくなった身体をdunkeldさんに押してもらって何とか持ち上げて通過し、すっかり暗くなった中、やっと先ほどのうちの一カ所の泊適地に到着。
雨の中、急いで(いたのはHiroさんとdunkeldさん・・・で、僕たちはほとんど動けなかった・・・)テントを張り、濡れた衣服をもう一つ持ってきたソロテントの中で一人づつ着替え、4人入ればイッパイの4人用テントの中でガスストーブを焚いて豚汁を作り出すと、ボワ〜っと暖かさが広がった。


豚汁の暖かさが身体にしみる。なんだか今日はじめてホッとした瞬間だった。結局米は炊けず、その日はメインの豚汁に、後はHiroさんが持ってきたツマミで談笑。Hiroさんとわっちゃんは2人で小さな焼酎を1本あけて、なにやら「ボーイスカウト」の精神について激論を戦わせていた。(笑)
みんなタップリ疲れているはずなのに、話しが楽しいのか寝ない。
「ピョロ〜〜〜」 時折、遠くでシカが鳴いている。まだ雨は降り続いている。頭の中に、鳥観図のように、夜の森の中にポツンと浮かぶテントの灯りが想像できた。たぶん今、この森の中にいるのは僕たち4人だけだ。そして、森の動物たちは活動の時間。


すっかり夜も更けてしまい、すでに真夜中と呼べる時間になってから、みんなでシュラフに潜り込んだ。明日は雨が上がることを祈りながら・・・・・・。



11/4


狭くてろくに寝返りもうてないから、あんまり熟睡できないだろう、という予想は見事に裏切られ、ぐっすり熟睡して起きたのがすでに9:30頃。何とか雨は止んでいる。 雨のあがった泊地 泊地の後ろの森

朝食に、昨日炊けなかった米を、フリーズドライのみそ汁と一緒に炊いて"おじや"にして食べる。山では何でも旨い。
まだ濡れている靴を乾かすのに火を焚き、テントを撤収して用意をして泊地を出発したのは、すでに12時近くになっていた。
まあ今日は、林道にでれば帰ったも同然だし、たぶん林道までは4時間あれば着けるだろう・・・なんて、今から思えばかなり甘い考えを僕はもっていたと思う。


出発して、昨日来たルートがやっぱり正しかったと確認し、例の岩場を越え、尾根を登り、斜面を急登し、ほとんどへつっているようなルートを行く。熟睡したおかげで、かなり回復したが、それでもこのルートはキツイ。
さすがに、昨日のうちに大谷の出会いは越えているので、記憶ではもうすぐ昨日の泊予定地だった岩谷の出会いのはずだが、これが思いの外遠い。進めど進めど同じように川を下に見下ろす緊張感のある細道である。
それでも今日は、まだ、川の中に魚を探す余裕もあった。実際かなり大きな魚の影を何匹も発見。大きなものはたぶん40cmオーバーだ。たぶんウグイかな?と思うがもしかするともしかする。Hiroさんは、来年のシーズン中に来ようなどと言っていた。


途中、大きな倒木に天然ナメコを発見したりしながら、やっと昨日の本来の泊予定地、岩谷出会いに到着。だが、ここでもまた道は対岸の左岸側に移っているのに、渡渉点も橋もない。よって、今回3度目の裸足の渡渉となった。
ここの泊地は申し分ない。昔、炭焼きか木地師の家でもあったのか、石垣の跡が残っている。川のすぐ近くで水も汲みに行きやすいが少し高台になっていて増水の心配もない。次回は逆ルートから入ってここで宴会でもしましょうか、などと軽口をたたいて、またまた尾根道をあがって進む。


途中の片斜面の道で、僕のザックの雨蓋からボロッとゴミが落ちて渓に転げた。幸い下まで落ちず、見える範囲で止まったので、急斜面だったが降りて拾いに行くことにした。・・・が、この日はこれで一気に脚力を消耗した。不覚である。
一番遅れながら、相変わらず片斜面の気の抜けない道を林道目指して歩く。途中で、チョロチョロと流れ落ちる小さな支流で水筒に水を入れていく。
もう少しで林道かな?というところで遅めの昼食。本当は、朝飯用にわっちゃんが持ってきてくれていたパンをいただく。これにバターと、Hiroさんが忍ばせていたマヨネーズにリンゴという、ハイカロリー昼食。家でこんなことやったら一気に太りそうだが、今回はそれだけカロリーは消費している。・・・いや、実際はこの後、さらに消費する事になろうとは夢にも思っていなかった。


道もだんだん明瞭になって平坦になってくると、やがて堰堤のように向こうに林道が見えた。
ふと、立てられていた看板をみると「岩谷〜七瀬間、通行止め」となっている。どうやら最近、渡渉点の橋などは流されたらしい。 道も所々崩れたようなことも書いてある。テメ〜!それならそうと、演習林事務所の側の軌道あたりにも書いておけよな!!!(怒)


最後に川を飛び石で渡って林道にあがる。いや〜、大変なトレッキングでした。お疲れさま、と言っている時点でもうすでに5時頃になっている。地図をみると、後、まだ林道歩きが4時間近く残っている。
「駐車場には8時か9時頃だね〜」などと言いながら、夕暮れ迫る秋の作業林道を進み出した。


途中、有名な大カツラの木を見つける。通称「トトロの木」などと呼ばれている木だ。わっちゃんはこれが見たいために来たようなもので、何枚か写真を撮っていた。 見事なウロ 見事な大きさ

トトロの木?


少ししゃべりながらも、とりあえずみんなそろって歩き出している。途中の上り坂でとうとう暗くなってヘッドランプを出す。
電池が残り少ないので、あまり照らさずに歩く。またもや、すでに足は限界を超えている。わっちゃんもそうらしい。
登りになると、いつの間にかHiroさんやdunkeldさんに離されてしまう。こっちはもうフラフラで大腿はおろかふくらはぎ、足の裏まで痛くなってきている。


途中、何度も休憩しながら、何とか2時間半ほど歩いて、予定の時間くらいにブナの木峠の分岐まで来る。ヘッドランプで地図を確かめ、さらに看板でどちらへ行くか確かめて、その林道を右折。さらに進む。
足は限界を超えながらも、何とか、あと1時間半ほどでおりられるだろうと思ううれしさで前へ進めた。


予兆はあったのだ。林道の真ん中に背の高い草がでてきたりした時には、「このまま林道がなくなったりしてなっ!」などと冗談を言っていた。1時間ばかり分岐から歩いた頃、先頭のHiroさんが僕らに向かって地獄への言葉を口にした。


「道、なくなってるわ」


僕とわっちゃんは唖然呆然。どうやらトドメをさされたらしい。何とか気力で持ちこたえていた足の運びを、ここで完全に失ってしまった。
とはいえHiroさんとdunkeldさんは「ちょっと腿が痛くなってきたかな〜」程度に言っている。僕らから見れば鬼の健脚だ。ここで「もうダメです」と言って泣いたところで誰も助けてくれるわけではない。置いていかれるだけだ。とにかく歩いて戻るしかない。


結局この林道間違いで2時間以上のロスをした。本来ならとっくに駐車場におりられている時間だ。本当に泣けてくる。
結局この後、15分〜20分歩くと限界が来る足をだましながら、Hiroさんとdunkeldさんに相当遅れつつ、何とか無事に駐車場に到着。下りたらすでに11時半頃という、恐ろしい時間になっていた。 疲れ切った真ん中のヒトNo1 疲れ切った真ん中のヒトNo2


まあ、それでも無事下りられたことに感謝して、さらに今回はHiroさんの参加にも感謝して(実際Hiroさんがいなければ、もっとひどいことになっていたかもしれない)、ここで解散する事にした。

イヤァ、みなさん、本当に本当に本当に本当に・・・・・オツカレサマでした!!!


後日談

当日の夜、美山の農振センターの駐車場から、わっちゃんが奥さんに下山の電話を入れると、奥さんは心配してこちらの警察に電話していたそうです。もう少しで大騒ぎになるところでした。奥さん、変なところへ誘って連れまわして申し訳ありません。ごめんなさい。


で、うちの妻はというと・・・・・。案の定帰ったら寝てました!(笑)

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