家庭用太陽光発電システムの運転状況報告

鈴木 耕三


1. まえがき

 地上に降り注ぐ太陽エネルギーは40兆kcal/秒という膨大な量で、1時間分の太陽エネルギーで全世界の年間消費エネルギーを賄うことができるといわれています.太陽光発電は太陽光エネルギーを太陽電池で直接電気エネルギーに変換するもので、化石燃料のように枯渇することがなく、騒音や廃棄物を出さない環境にやさしいエネルギー源です.ただし、夜間や曇天日は発電できないし、晴天下でもエネルギー密度は1kW/m2程度なので、広大な用地がなければ大規模電力発電はできません.それでも、太陽電池にはスケールメリットがなく、小規模設備でも一定の効率で発電できるので、住宅等の屋根に太陽電池を並べる小規模分散型発電設備としての用途が有望であると考えられています.
 わが国の民生用電力消費量は家電製品の大型化と多機能化に伴って近年急増しています.さらに、夏場の家庭用・ビル用冷房需要の伸びが著しく、電力各社はピーク需要に合わせた設備(これらは稼働率が低いために経済性が悪い)の増強を強いられています.一方、太陽光発電はピーク電力需要対策としては絶好の電源であると考えられます.日照量が最大になる夏場に冷房需要も最大になるからです.太陽電池を住宅の屋根に設置するのであれば、用地が不要で工期が短いことも大きな魅力です.
 わが国には現在約3,740万戸の住宅があり、この約60%に当たる2,330万戸が1戸建て住宅です.これらの住宅に出力3kWの太陽電池を設置すれば、発電電力量は900億kWh/年、節減可能重油量は2,100万kl、削減可能炭酸ガス排出量は1,680万t(炭素換算)に達するという試算があります.
 わたしはかねがね家庭用太陽光発電システムに強い関心を持ち、いつの日か自宅に設置することを夢見ていました.これがいよいよ現実のものになったのは、1992年4月に電力各社が太陽光発電設備からの余剰電力の買上げを決定したことと、1994年4月に政府が住宅用太陽光発電システムモニター事業補助金制度を発足させたためでした.余剰電力の買上げは「逆潮流ありの系統連携」を可能にするものであり、補助金制度は未だ経済性が低い住宅用太陽光発電システムの普及を支援する画期的なエネルギー政策でした.そこで、1992年8月に関西電力と三洋電機の協力を得て基本検討を開始し、1994年8月に設置工事を完了、同年11月1日からわが家の太陽光発電システムは稼働を始めました.その直後に起った阪神淡路大震災でも損傷を受けることがなく、今日まで無事故・無故障運転を続けており、2003年10月末で満9年を迎えました.この機会にこれまでの運転実績を報告し、みなさんのご参考にしたいと思います.ご意見・ご批判をお待ちしています.

2. システムの概要

 太陽光発電システムの中心は太陽電池で、当初設置したものは三洋電機の多結晶シリコン太陽電池でした.1枚の太陽電池モジュール(CSP-A235-M10)は大きさ985mm×870mm、最大出力102Wで、これを30枚(6直列5並列)配置して総容量3.06kWを得るようにしていました.
 この太陽電池は2001年4月に三洋電機によって高効率型の新製品(HIP-G48B)に取替えられました.薄膜アモルファスと単結晶シリコンをハイブリッド化した製品で、最大出力160Wのモジュール(1,320mm×895mm)を20枚並べて総容量3.2kWを得ています(図1).

図1. 既築木造住宅の2階屋根に配置された20枚の太陽電池モジュール.方位角はほぼ0度(真南向き)で勾配は4/10、周囲には太陽電池に陰を落とす遮蔽物はない.温度上昇による発電効率の低下を防ぐために、モジュールは屋根面から約110mm浮かせてある.

太陽電池からの直流電力はインバータ(直交変換器)(図2)によって交流電力に変換します. 太陽電池には蓄電機能がないので商用電源を併用(系統連携)し、発電電力が不足すると電力会社から買電し、発電電力が余ると電力会社へ売電します(逆潮流による余剰電力の販売).この取引計量用に2台の電力量計が設置されています(図3).
図2. 屋内に設置したパワーコンディショナ.太陽電池からの直流電力をインバータで交流に変換して分電盤へ送り、余剰電力は電力会社へ売電する. 図3. 太陽光発電設備と商用電力系統との間には、買電電力量計(左)と売電電力量計(右)の2台の取引メータが設置されている.

3. 運転データの分析と考察

 1994年10月から2003年12月までの発電量、買電量、売電量および消費電力量の月間集計値を表1と図4に示しました.
 ここで、消費電力量は消費量=発電量+買電量-売電量として計算しています.図4で1996年3月から1998年6月までのデータがないのは、わが家が東京へ転居したために、しばらく自宅が空き家になっていたことによります.



 累計発電量 
kWh
 累計買電量 
kWh
 累計売電量 
kWh
 累計消費量 
kWh
前期: 94.11. - 01.3. (77か月) 20,963(272.2) 13,340(173.2) 14,827(192.6) 19,476(252.9)
後期: 01.4. - 03.12. (33か月) 10,946(331.7) 6,862(208.0) 6,918(209.6) 10,890(330.0)
通期: 94.11. - 03.12. (110か月) 31,665(287.8) 19,920(181.1) 21,619(196.5) 29,966(272.4)
表1. 期間別の累計発電量、累計買電量、累計売電量および累計消費電力量
(  )の数値は月間平均値を示す.2001年4月のシステム更新の前後に分けて集計した.

図4. 1994年11月から2003年12月までの発電量、買電量、売電量および消費電力量の月間集計

(1) 図4に示すように、発電量は日照量の季節変動に伴って200-450kWh/月の間で変動しています.また、売電量もこれに合わせて100-300kWh/月の間で変動しています.これは発電量から売電量を差し引いた自家使用量(日照時間内の消費量に近い)が年間を通じてほぼ一定(100-150kWh/月)になっているためです.図5にはわが家の電力消費を充たすために太陽光発電と買電から供給された電力量の推移を示しました.太陽光発電からの供給量の割合は37%(後期)となっており、この分だけ系統電力に対する負荷が緩和・平準化されたことになります.

図5. 太陽光発電による系統負荷の軽減・平準化の効果

(2) 表1に示すように、通期の総発電量は31,665kWhで、関西電力の従量電灯A料金に基づいて金額に換算すると734,630円(80,140円/年)になりますが、後期だけでみると発電量が約22%増加したために、この数字は92,340円/年になりました.わが家の場合は政府の補助金(総工事費の50%)を受けることができましたが、それでも約300万円の投資をしなければなりませんでした.その結果、投資回収可能年数は初期投資額を年間発電量(金額換算)で除して32.5年(後期データによる)となりますが(金利は無視)、これはいかにも長過ぎます.わが家の太陽光発電システムは経済性を追求するのが本来の目的ではなく、太陽光発電を実体験することにあるのですが、今後の普及拡大のためには製品価格の低下と太陽電池の効率向上、さらには補助金の増額や電力会社による余剰電力買い取り価格の見直しにも期待したいところです.ちなみに、ドイツでは太陽光発電からの余剰電力買い取り価格は商用電力料金の3倍に設定されていると聞いています.
(3) 図6に示したのは売電量と買電量の差をグラフにしたものです.売電単価と買電単価は電力会社によって同一に設定されているので、この両者の差に単価を乗じると比例費ベースの損益となります.図で横軸の上側にグラフがくると売電量>買電量で黒字、下側にくると赤字ということになります.表1によって過去の実績から計算すると、正味で約360円/月のお金を毎月関西電力から受け取っていることになります.電気をより大切に使うことによって消費電力を減らすことができれば、買電量が減少するとともに自家使用量が減少して売電量が増えるので収支は改善します.このグラフは電気を上手に使うための動機づけに役立つものと思います.住宅の断熱性向上、白熱電球の蛍光灯への取替、早寝早起きなどの生活習慣の改善、待機電力の実態調査と削減、ガスと電気のベストミックスなど、わが家は省エネルギーの工夫をもっとすべきだと感じています.

図6. 月間売電力量と月間買電力量の差
グラフの上側は売電>買電、下側は売電<買電を示す
以上(04.01.09)



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